「建設業許可を取るのと、会社を作るのはどちらが先?」
「今は個人事業主だけど、法人化してから許可を取った方がいい?」
「個人で建設業許可を取ってから法人化すると、許可はどうなる?」
法人成りと建設業許可を検討されている個人事業主の方から、このようなご相談をよくいただきます。
結論からお伝えすると、近いうちに法人化することが決まっているのであれば、先に法人を設立し、その法人で建設業許可を申請する方が、手続きはシンプルです。
個人事業主として建設業許可を取得した後に法人化しても、個人の許可を新しい法人が自動的に使えるわけではありません。 法人へ許可を引き継ぐには、建設業許可の承継認可などの手続きが必要になります。
そのため、数か月後など近いうちに法人化する予定が決まっているのであれば、法人設立後にその法人で新規許可を申請した方が、許可に関する手続きを一度にまとめやすくなります。
ただし、必ず法人設立を先にすべきというわけではありません。
「すぐに500万円以上の工事を受注する予定がある」「法人設立まで待っていると仕事に間に合わない」といった場合には、まず個人事業主として許可を取得し、その後法人へ承継する方法が適していることもあります。
この記事では、法人設立と建設業許可のどちらを先に進めるべきか、福岡県での承継手続き、法人設立時の注意点、公共工事を予定している場合の経審への影響まで解説します。
目次
法人成りを予定している場合の考え方を整理すると、次のとおりです。
| 現在の状況 | 検討しやすい順番 |
|---|---|
| 近いうちに法人化することが決まっている | 法人設立 → 法人で建設業許可申請 |
| 法人化するかまだ決まっていない | 許可が必要になる時期や事業計画を確認して判断 |
| すぐに許可が必要な工事を受注する予定がある | 個人で先に許可を取得し、後から法人へ承継する方法も検討 |
| 公共工事への入札を予定している | 法人設立・許可・経審・入札参加資格まで含めてスケジュールを検討 |
どちらが正解かは、法人化する時期と、建設業許可が必要になる時期によって変わります。
「法人化する予定だから、とりあえず個人で許可を取っておこう」と進める前に、今後のスケジュールまで含めて考えておくことが大切です。
近いうちに法人化することが決まっているのであれば、先に法人を設立し、その法人名義で建設業許可を申請する方法が分かりやすいです。
個人事業主と法人は法律上別の事業者です。
そのため、個人事業主として取得した建設業許可は、会社を設立しただけで自動的に法人へ移るものではありません。
個人で許可を取得した後に法人化する場合は、
・個人として建設業許可を申請する
・法人を設立する
・個人から法人への事業譲渡について承継認可を申請する
と、許可に関する手続きが増えます。
一方、最初から法人で事業を行うことが決まっているのであれば、
法人設立 → 法人の体制を整える → 法人名義で建設業許可を新規申請
と進めることで、許可取得までの流れを整理しやすくなります。
個人事業主が建設業許可を持っている状態で法人を設立しても、個人の許可を法人が自動的に使えるようになるわけではありません。
現在は、一定の要件を満たして事前に認可を受ければ、事業譲渡によって個人の建設業許可を法人へ承継できる制度があります。
建設業法第17条の2では、事業の譲渡・譲受けについてあらかじめ認可を受けた場合、譲受人が譲渡日に建設業者としての地位を承継する仕組みが定められています。
福岡県知事許可の場合は、事業譲渡の効力発生日の2か月前までに承継認可申請を提出する必要があります。
また、法人成りの場合は、承継先となる法人がまだ設立されていない状態では通常は認可申請を行うことができません。
そのため、
・法人設立
・承継認可申請
・福岡県での審査
・承継認可
・予定した日に個人から法人へ事業譲渡
という流れを事前に組んでおく必要があります。
なお、福岡県知事許可の承継認可申請には手数料はかかりません。
法人成りによる承継で特に注意したいのが、法人設立日・承継認可申請日・事業譲渡日などの日付です。
適切に承継認可を受けて事業譲渡を行えば、承継日当日も建設業許可は有効で、法人が建設業者としての地位を引き継ぐことができます。
そのため、承継制度そのものは個人から法人へ建設業許可を途切れさせずに引き継ぐための制度です。
ただし、日程の組み方には注意が必要です。
福岡県では、個人事業主が法人成りする場合、認可が下りるまでは従前どおり個人事業主として許可要件を維持する必要があります。
例えば、承継日前に経営業務の管理を担う方や営業所技術者等が法人側へ移籍してしまうと、個人事業主側が許可要件を満たさなくなる可能性があります。
また、認可を受ける前に事業譲渡を行ってしまうと、予定していた承継ができない可能性があります。
「いつ会社を設立するか」「いつ承継認可を申請するか」「いつ個人から法人へ人員や社会保険を移すか」「事業譲渡日をいつにするか」を一体で考えることが重要です。
特に、許可が必要な工事を継続して受注している場合は、法人成りの日程を決める前に承継手続きのスケジュールも確認しておくと安心です。
ここまで読むと、「それなら絶対に法人設立が先」と思われるかもしれません。
しかし、実際には個人事業主として先に許可を取得した方がよいケースもあります。
例えば、
・近いうちに500万円以上の工事を受注する予定がある
・元請会社から早急に建設業許可を取得するよう求められている
・法人化する時期がまだ決まっていない
・法人設立まで待つことで受注機会を逃す可能性がある
といった場合です。
福岡県知事の新規許可は、申請後の標準処理期間として2か月かかります。 さらに、その前に許可要件の確認や必要書類の収集も必要です。
そのため、「法人化する予定があるか」だけではなく、「いつまでに建設業許可が必要なのか」も一緒に考えることが重要です。
建設業許可取得までの期間については、 福岡県の建設業許可は何か月かかる?申請から取得までの期間・目安 で詳しく解説しています。
法人設立後に建設業許可を取得する予定であれば、会社を作ってから許可要件を考えるのではなく、法人設立の段階から建設業許可の要件を確認しておくことをおすすめします。
特に確認しておきたいのは、次の4点です。
建設業許可では、建設業の経営を適正に行うための体制が必要です。
代表的なのは、常勤役員等のうち1人が、建設業について一定期間の経営業務の管理責任者としての経験を有しているケースです。
社長自身が要件を満たしていれば問題ありませんが、社長ではない方の経営経験を利用して要件を満たす場合は、その方を常勤役員等として配置できる会社設計が必要になります。
「会社を設立してから、社長では経営経験が足りないことに気付いた」ということがないよう、役員構成を決める前に要件を確認しておくと安心です。
なお、必ずしも設立時からその方を役員に入れていなければ申請できないというわけではありません。 許可申請前に役員変更等を行う方法もありますが、追加の登記手続きが必要になるため、あらかじめ確認しておく方がスムーズです。
経営業務の管理については、 建設業許可の経営業務の管理責任者等の要件 で詳しく解説しています。
建設業許可を取得するには、許可を受けようとする業種について要件を満たす営業所技術者等を営業所ごとに配置する必要があります。
要件を満たす方法には、
・対応する国家資格等を持っている
・指定学科を卒業し、必要な実務経験がある
・一定期間の実務経験がある
などがあります。
法人を設立した後に「社内に技術者の要件を満たす人がいなかった」と分かると、すぐには許可申請できない場合があります。
そのため、法人設立前の段階で、誰が営業所技術者等になるのか、その方の資格や実務経験をどの資料で確認できるのかまで整理しておくことが重要です。
営業所技術者等については、 建設業許可の営業所技術者等|資格・実務経験の要件 もご参照ください。
建設業許可では、建設業を営む営業所としての実態があることも確認されます。
法人の本店所在地を決める際には、単に登記できる住所かどうかだけでなく、建設業法上の営業所として使用できるかも確認しておきましょう。
また、建設業許可では適切な社会保険への加入も確認されます。 法人化に伴い健康保険・厚生年金保険等への加入手続きが必要になる場合がありますので、許可申請のスケジュールと合わせて準備することが大切です。
一般建設業許可では、財産的基礎または金銭的信用の要件があります。
代表的な基準は、
・自己資本が500万円以上あること
・500万円以上の資金調達能力があること
などです。
新しく設立した法人の場合は、創業時の財務諸表をもとに財産的基礎が判断されます。
そのため、これから一般建設業許可を取得する予定であれば、法人設立時の資本金を500万円以上にするかどうかを会社設立前に検討しておく価値があります。
ただし、建設業許可のためだけに無理に資本金を500万円にする必要はありません。
自己資本が500万円未満でも、500万円以上の資金調達能力を証明する方法があります。
また、資本金は建設業許可以外にも、会社の資金繰り、信用、出資関係、税務などに関係します。
そのため、資本金の金額は建設業許可の要件だけで決めるのではなく、会社全体の事業計画を踏まえて決めることをおすすめします。
税務上の影響については税理士等に確認し、建設業許可の財産要件については行政書士等に確認しながら決めると安心です。
財産要件については、 建設業許可の財産的基礎|500万円を満たせない場合 で詳しく解説しています。
「会社を作ったばかりだと、何年か実績を作らないと建設業許可を取れないのでは?」と思われる方もいらっしゃいます。
しかし、法人を設立したばかりで、法人としての工事実績がまだない場合でも、許可要件を満たしていれば建設業許可を申請することは可能です。
例えば、代表者の個人事業主時代の経営経験や実務経験などを利用できるケースがあります。
大切なのは、法人として何年営業したかではなく、常勤役員等や営業所技術者等などの許可要件を満たし、その内容を必要な資料で確認できるかどうかです。
法人設立直後の建設業許可については、 会社設立直後で工事実績ゼロでも建設業許可は取得できる? でも詳しく解説しています。
個人事業主として公共工事を行っており、法人成り後も公共工事への入札を予定している場合は、建設業許可だけでなく経営事項審査(経審)や入札参加資格まで含めてスケジュールを考える必要があります。
公共工事を直接請け負うためには、原則として経営事項審査を受ける必要があります。
法人成りをすると、
・法人設立日
・個人から法人への事業承継日
・法人の建設業許可
・経営事項審査
・各自治体等の入札参加資格申請
など複数の時期が関係します。
福岡県の経営事項審査では、一定の要件を満たす法人成りについて、個人事業時代の完成工事高等を考慮できる取扱いがあります。
ただし、自動的にすべての実績がそのまま法人へ引き継がれるという意味ではなく、法人成りの方法や法人設立・許可手続きの時期など、一定の条件があります。
特に公共工事を事業の中心にしている場合は、会社設立の日だけを先に決めるのではなく、経審や入札参加資格の時期まで含めて事前に確認しておくことをおすすめします。
経営事項審査については、 経営事項審査(経審)とは?審査項目・申請の流れ で詳しく解説しています。
すでに個人事業主として建設業許可を取得しており、これから法人化する場合は、承継制度を利用できる可能性があります。
福岡県知事許可の場合、法人成りによる事業譲渡の一般的な流れは次のようになります。
① 法人を設立する
② 法人の役員・営業所技術者等・社会保険等の体制を確認する
③ 個人から法人への事業譲渡について承継認可を申請する
④ 福岡県の審査・認可
⑤ 予定した事業譲渡日に法人へ建設業者としての地位を承継する
承継認可は、法人化した後に事後的に届け出ればよい手続きではありません。
事業譲渡の効力発生日より前に認可を受ける必要があるため、法人設立の日程を決める段階から許可手続きのスケジュールを組むことが重要です。
法人としての営業年数や工事実績がなくても、必要な許可要件を満たしていれば申請できます。
ただし、役員構成、営業所技術者等、営業所、社会保険、財産的基礎などを確認する必要がありますので、会社設立前から許可要件を確認しておくとスムーズです。
いいえ。 個人事業主と法人は別の事業者であるため、法人を設立しただけで個人の建設業許可を法人がそのまま使えるわけではありません。
法人へ許可を引き継ぐ場合は、事業譲渡による承継認可などの手続きが必要です。
承継先の法人が建設業許可を持っていない場合、福岡県の承継制度では、認可を受けることで個人事業主の許可番号が引き継がれます。
事前に承継認可を受け、予定した事業譲渡日に適切に承継する場合は、承継日当日も許可は有効であり、制度上は許可を途切れさせずに法人へ引き継ぐことができます。
ただし、承継認可の申請時期や人員・社会保険の移行時期などを誤ると、許可要件を満たせなくなる可能性がありますので、法人成りの日程を決める前に確認しておくことをおすすめします。
必ずしも資本金を500万円以上にする必要はありません。
一般建設業許可では、自己資本500万円以上のほか、500万円以上の資金調達能力を証明する方法などがあります。
資本金は建設業許可以外の会社運営にも関係するため、許可要件だけで金額を決めるのではなく、事業計画全体を踏まえて検討しましょう。
法人設立と建設業許可のどちらを先にするべきかは、すべての方に同じ答えがあるわけではありません。
・いつ法人化したいのか
・いつまでに建設業許可が必要なのか
・誰が常勤役員等になるのか
・誰が営業所技術者等になるのか
・許可要件を証明する資料が揃っているか
・公共工事を予定しているか
などによって、適した進め方が変わります。
「会社を作ってから許可要件を満たしていないことに気付いた」「個人で許可を取った直後に法人化することになった」「法人成りしたら経審のスケジュールが合わなくなった」とならないよう、法人設立前に一度、建設業許可まで含めたスケジュールを確認しておくことをおすすめします。
「法人設立と建設業許可、どちらを先にした方がいい?」という段階でのご相談も承っています。
現在の経歴や許可取得を希望する時期、法人化の予定をお伺いしたうえで、どのような順番で進めるのがよいか一緒に整理します。
「まだ法人を作る日も決めていない」という段階でのご相談でも大丈夫です。
法人設立と建設業許可の進め方を相談する
行政書士 本田奈美
※本記事は、2026年8月23日時点の建設業法・関係法令および福岡県が公表している建設業許可・承継認可・経営事項審査に関する情報・取扱いに基づいて作成しています。法人成りや建設業許可の承継は、法人の設立時期、事業譲渡日、役員・営業所技術者等の状況、公共工事への参加状況などによって必要な手続きが異なりますので、実際に手続きを行う際は最新の取扱いをご確認ください。
建設業許可が必要になる工事、許可の種類、取得要件、必要書類、費用、申請方法などをまとめて確認したい方は、建設業許可の総合ページをご覧ください。
福岡県の建設業許可|要件・費用・申請方法を詳しく見る

行政書士(登録番号:第24402289号)
福岡県行政書士会所属/CCUS登録行政書士
建設業許可を中心に、経営事項審査・各種許認可手続きをサポートしています。
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